ぱぷでみー賞

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ムーラン/多様性黎明期の傑作


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いつもお読み頂きありがとうございます。
今日はディズニー長編映画36作目ルネサンス期の傑作ではないかと個人的には思った『ムーラン』です。

 

 


まずは概要

 

原題:Mulan
上映時間:88分
監督:バリー・クック/トニー・バンクロフト
脚本: リタ・シャオ/クリストファー・サンダース/フィリップ・ラゼブニク/レイモンド・シンガー/ユージニア・ボストウィック=シンガー
出演者:ミン・ナ/B・D・ウォン/エディ・マーフィ/ミゲル・フェラー
公開:1998年
製作国:アメリカ

 

このブログを書くにあたりシャン・ユーが藤岡弘、だって初めて知って衝撃を受けている。

確かに言われてみれば藤岡弘、声だけど、藤岡弘、ってディズニー声優だったのか…

 

ムーラン(吹替版)

ムーラン(吹替版)

  • すずきまゆみ
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あらすじ

 

偉大な戦士の娘さんでお転婆なムーランは、家のため縁談?お見合い?のセッティングをしてもらうため、いつもはしないお化粧にひらひらしたおめかしして仲人さんに会いに行くけど、ご先祖様に祈り倒していたお父さんの心配が的中して上手くいかず、仲人さんを激怒させて落ち込んで帰宅。

 

立派なお父さんは「遅咲きの花はより美しく大輪の花をつけるよ」なんて慰めてくれるけど、そもそも仲人さんに会いに行く前からお淑やかとは正反対で活発で男勝りな所があるムーランは自分を殺してまで良いお家に嫁ぐって言うのがしっくり来ていないようで、家族のため、家のためにって気持ちとの間で葛藤があり、有名な『リフレクション』にのせて気持ちを歌い上げます。
何気にムーランがメインの曲はこれだけなんですね。

 

そんな落ち込んでいるところに追い打ちをかけるかのように、国から召集令状が届き(おそらく先の戦いで痛めた)足の悪いお父さんが戦地に赴かなければならないことに…
ムーランは「ええぃ、もうわしが男の振りして父の代わりに行ったるワイ!!」と夜な夜なお父さんの甲冑や剣を身に着けて出て行ってしまう。

 

事の重大さにご先祖様'sも夜は墓場でミーティング~♪とばかりにムーランが無事帰ってこれるようにファ家の最強守り神を手配したはずなのですが、色々あって落ちこぼれ守り神のムーシューとコオロギをお供に戦地に赴くムーランの運命やいかにといったストーリー。

 

ジェンダーや昔ながらの価値観を少しずつアップデートしようとしている途中の作品という感じで、『アラジン』、『ノートルダムの鐘』、『ヘラクレス』、『ポカホンタス』あたりの集大成的な出来だと思いました。

 

ネタバレ無し感想

 

ディズニーのルネサンス期といえば、脱白人プリンセスやおとぎ話、脱欧米が進んで第二の黄金期なんて言われている時期の映画で、これなんかまさに中国が舞台でプリンセスでもなく、まさかの戦争に赴いたりするルネサンス期以前のディズニーではとても考えられない多様性にとんだ内容になっているなと、ひさっしぶりに観て感じました。

 

今観ると冒頭の旧時代的な考えを詰め込んだ『家に名誉を』なんかは少しギョッとするくらい家父長制や、男女の役割を古めかしい価値観で歌っていて令和の時代に大人になって聴くと中々すごい歌です。笑

「娘は嫁ぎ先次第では家に名誉を運ぶ、だから従順で無口で絹のような肌に細いウエストで、お淑やかにしていれば男に気に入られる。そして男は国を守り、女は家を守る〜」という内容を縁談?の準備をしながら歌われる。

 

ムーランがこれからすること、後半との対比をより鮮明にさせるためこれでもかというほど旧時代的な価値観をわざとらしく押し出していく最初のシークエンスは一昔前の映画とはいえ勇気ある。

 

『ムーラン』はディズニー映画にしてはミュージカルシーンが少ないと思うのですが『リフレクション』や『闘志を燃やせ!』など名曲が多い。

 

あと、絵柄に関しては前作の『ポカホンタス』みたいに雰囲気を重視した少しデフォルメされた絵柄がちょっと馴染みにくいな〜なんて思うのですが、背景は白雪姫の頃から変わらずめちゃくちゃキレイだし、よりアクションに力を入れて動かしやすいデザインにしたのかなとも思う。
中盤に差し掛かる頃には絵柄も全く気にならないし、イキイキ動くキャラが素晴らしい。

 

 

ネタバレ有り感想

ストーリー自体は『ポカホンタス』みたいに中国で昔から伝わる言い伝えだか、本当にいた人物のお話が元のようですが、とにかく展開が良く出来てるし改めて観るとめちゃくちゃ面白い。
最近のディズニーはポリコレ、ポリコレ言われてますが、ルネサンス期から多様性を模索して新しい価値を観取り入れようとしてたんだなーと感じる内容。
しかも分かりやすく。

 

映画冒頭程ではないですが、中盤でも古い女性観をバチバチに浴びせられるムーラン、戦地に挑む前の訓練シーンでは「お前の家は息子じゃなくて娘をよこしたのか」(その通り!!)や「俺が国を守れる本物の男にしてやる」とシャン隊長が歌う『闘志を燃やせ!』や理想の女性像を男目線で謳う『愛しき女よ』なんかもある。これでもかという男は強いという価値観です。

 

話しはそれますが『闘志を燃やせ!』、原題『I'll make a man out of you』が私はめちゃくちゃ大好きなのですが、ググってみると同じくディズニーで1番好きみたいに書いている人もいて、私だけじゃないんだと思った。
どこが好きかはいまいち説明できないですがめちゃくちゃカッコよくて、テンション上がるんですよね。
男性コーラスとシャン隊長のいい声もあってやる気に満ち溢れてきそうな気になります。

 

曲としては「お前の家は息子じゃなくて娘をよこしたのか」ってほどなよなよなムーラン(その通りだからね!!)や他の仲間たちを強い男に叩き直してやろうと思ったけど、「無理だ、お前は強くなれないすぐに出ていけ~♪」っていい声で追い出されたムーランが最後に力ではなく、知恵を使って隊長の試練クリア第一号になって、そこからみんなでムキムキマッチョに強くなっていく…っていう文字にして説明するとかなりベタな展開ですが。
前半部分のクライマックスになるので、場面的にも盛り上がりMAXなんで話のテンションと曲のテンションもめちゃくちゃリンクしてるんですよね。
この辺りの盛り上げ方と言い、音楽といい流石ディズニーとしか言いようがないです。
やっぱり音楽面強いですよね。

 

その後、みんなを救って敵を倒す英雄的偉業を成し遂げるのですが女性だという事がバレてしまい隊から追放されてしまいます。
冒頭でお父さんが「ばれたら殺されてしまう」って言ってたのでかなり温情をかけたのでしょうが…

 

それにしても雪崩シーンはアニメの良さを存分に活かしてて最高ですね!!
既視感あるといえばそれまでですが…そう考えると『ムーラン』は結構ベタな展開が多いですが、演出の妙なのかやっぱり見せ方が上手ですよね。

 

ところでその後、都に行ってシャン隊長にシャン・ユーが生きてるって伝えるシーンがあるのですが体長は聞く耳を持ってくれず「ピンのいう事は信じたのに、ムーランのいう事は信じないのか」的なセリフがあり、隊長の返しが「誰がお前を信じられる」でムーラン怒っちゃうのですが、これって隊長は「誰が女のお前を信じられる」とは言ってないので、「嘘をついたお前を信じられない」って言ってるだけだと思うんです私は。
そうなると捉え方も少し変わってきてムーラン自身も長年の染みついた「女のいう事なんて…」的な考えがあるのかななんて思った。

 

最終決戦は痛快で仲間の3バカトリオが女装して敵を油断させたり、ムーランが女性的なアイテムの扇子を使って相手の剣を奪ったりジェンダーを象徴するアイテムがごっちゃごちゃに入り乱れます。良くできてる

 

ラストのオチでシャン隊長がファ家を訪ねてきて結局色恋終わりを「う~ん」と思う方も多いようで、私も最初は「確かにな~、ヒロインに王子様が不要になるのはあと何作か後のお話しだな」なんて思ったのですが、でも『ムーラン』をジェンダーのお話だけではなく、、自分らしさと向き合う多様性のお話しと考えると、自分らしく生きると恋愛は諦めなきゃいけないのか??って思ったので、あのラストはあのラストで悪くない気がした。

 

自分らしく生きた結果、冒頭で求めていた家族への義理を理想の形で手に入れることが出来ましたって思えば超大団円でいいじゃん。って思えます。

 

 

ぱぷぽ